司馬遼太郎さんの『街道をゆく』の神田界隈を読んでいたら、 岡本綺堂さんの『半七捕物帳』
と野村胡堂さんの『銭形平次』についての記述がありました。
どちらも、時代劇全盛の頃にはテレビや映画になっていた作品ですが、今は、忘れられつつ
ありますね。
半七捕物帳については、『街道をゆく』の中で、当時にの吉田茂首相が新聞記者から「時間の
ある時には、どんな本を読んでいるのか?」と聞かれ、「岡本綺堂さんの半七捕物帳」と答えた
一国の首相たるものが、そんな世話なものをと、攻撃された事が載っていました。
その時点では、同じ記者の仕事をしていた司馬さんは、情けなく感じたそうです。
吉田茂は英字新聞を読んでいる教養人でしたから。
天邪鬼な私は、さっそく『半七捕物帳』を取り寄せて読んでみたのですが、これが大変面白い
のに驚いてしまいました。
明治維新後、老人になったなった半七の所に新人の新聞記者が話を聞きに行くというスタイルで
進んでいきます。
文体が、落語の口述のようです。
黙読でなく、音読すると楽しめそうですね。
幕末の、ことば使いや、制度、生活様式などが、生き生きと描写されているんですね。
番屋と自身番の違い、初めて知りました。
白鼠、水口など今は使われない言葉がとても新鮮です。
昔の時代劇で、取り方が『御用だ、御用だ』と提灯を連ねて突きつける場面が映っていました。
観ていて、正直言って、馬鹿じゃないのと思っていたのですが、ほんの中で半七が『御用の筋だ。
ネタ上がってるんだ。恐れ入りやがれ。』と啖呵を切ると、『恐れ入りました。』と答えるんですね。
昔は、お上に恐れ入らないと駄目な時代だったのですね。
犯人が出ると、一家全員が罪に問われるばかりか、長屋に住んでいれば大家さんまで監督責任が
問われるという時代背景もあったのでしょうが、半七は職権を傘にきる事をしません。
もちろん、その前にシャーロックホームズ並みの、地取りと綿密な推理があるのですが。
風景描写が素晴らしいのも魅力です。
今、三巻目なので、当分楽しめます。
ここでは私が日々体験したことや感じたことなど、診療に関係する以外のことも書いています。
不定期ですが、随時更新していきますのでよろしくお願いします。
記事の続きは、記事の見出しか、右の詳細ボタンをクリックしていただくと見ることができます。