河合隼雄さんは、心理学の大家でありながら、私などの素人向けにも
わかりやすい本を残してくれました。また、臨床心理士の草分けとして
多くの方の治療に尽くされました。
さらに、阪神淡路大震災や、学校における殺人事件などにより、子供たちが受けた
心の傷への“癒し”に関し、様々なルートから尽力されました。
河合隼雄さんにたどり着いたのは、村上春樹さんの著作を読み進めているときに、
『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』という本に出会ってからです。
この本の中で両者は、お互いに、自分自身をさらけ出し、告白し、尋ね合っています。
私の周りに、不登校やいじめで悩んでいる人がいるのではありませんが、この本を読んで、
私自身の心の中の澱みが少し軽くなったように感じました。
『われわれ心理療法家は、時として「自殺予告」を経験することがある。』
『端的に言ってしまえば、人間が成長するということは、象徴的には、「死と再生」を繰り返すようなものだから、
人間が自己変革する苦しみのなかで自殺を考えたり、死にたいと思ったりするのは、むしろ当然とも言える。
だから、「死ぬ」と言われても、びくびくすることなく、その意味を考えて対処することが、
心理療法家にとって大切である。』
『勉強の不得意な子供に対して、親や先生は「辛いのなら、自分のペースでゆっくりやりなさい」
とアドバイスするのではなく、「あなたが怠けているからだ。もっと努力をしなさい」と叱ってきた。』
『でも、考えてみて欲しい。誰もが猛練習すればプロ野球の選手になれるものだろうか。
数学の得意な人と苦手な人とでは、問題を解くスピードも違えば、理解力も違うはずである。
先生が皆に同じ説明をしても生徒がそれをマスターできるかは、生徒自身の理解力の有無によるものである。』
『最近は「学級崩壊」。僕は、また流行らせるなと心配しています。新聞が書いたら流行るんです。
自殺予告、ナイフもそうでした。子どもは出よう出ようとする。
やらないと時代遅れになる。学生紛争のとき、教授会で言ったことがありました。
先生、一生懸命考えんときなさい。5年たったら全部なくなっている。
5年後を考えてボチボチやりましょう。カンカンになったりしたら、火に油。
「学級崩壊」という言葉があるそうだけど、うちのクラスは絶対崩壊しない!
と先生がきちんと言えばいいんですよ。』どうです。なかなか良いでしょう。
河合さんには、もう少し長生きして頂いて、リーマン・ショック後の混迷の時代に指針を示して欲しかったと思います。
(さしずめ、今の"愛子さまの不登校騒動"などは、全く無視をして、コメントなどはひとことも発しないでしょうね。)
ここでは私が日々体験したことや感じたことなど、診療に関係する以外のことも書いています。
不定期ですが、随時更新していきますのでよろしくお願いします。
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