藤沢周平さんの獄医立花登手控えを読んが感想の続きです。
全回、この小説には風景描写があまり描かれていない、と書きましたが私の
間違いでした。
「薄曇りの空から、鈍い光が地面に落ちて、その光を堀の水が力なく照り返していた。
思い出したように吹く弱い風がある。風は乾いた地面の砂をわずかに巻き上げ、葉が
落ちつくした岸の柳の、糸のように垂れさがる枝の先をざわめかしてから、水面にすべり
落ちる。」
「すると、水はいっときこまやかな皺をきざんで震えつづけるが、風が通りすぎると、また
沼のように生気のない静けさを取りもどすのだった。子供が投げこんだらしい、ちびた
赤い鼻緒の子供下駄がひとつ、じっと動かずにうかんでいる。」
「寒々とした風景だった。川岸を行く人びとは、首をちぢめるようにして、いそぎ足に歩いて
いる。登も腕組みをして、首をちぢめた。」
四巻目のある個所の描写です。
素晴らしいと思いませんか?
藤沢周平さんの別の小説で、今まで読んだ中で一番美しい日本文だと感じだ文節がある
のですが、どの小説に書かれていたのか思い出せません。
時間が出来たら、ゆっくりと探してみようと思っています。
ここでは私が日々体験したことや感じたことなど、診療に関係する以外のことも書いています。
不定期ですが、随時更新していきますのでよろしくお願いします。
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