あの時代は、癌の患者さんに病名を伝える時には、婉曲に伝えるのが主流でした。
『検査の結果は、癌ではありませんでしたが、癌になりかけています。』、『このままに
しておくと癌になってしまいますから、その前に切って取ってしまいましょう。』と医者は
患者さんに説明したものです。
患者さんも、その家族も(今と違って)がんと宣告してほしく無かったのです。
医者の方も、患者さんの為を考えての事でしたが、患者さんが信じているかは余り気に
かけていなかったと思います。
前回書いた、地下の放射線照射室の前の患者さんの行列の前にエレベーターの乗り口が
ありましたので、どうしても患者さん達の動作(喉頭が摘出されているので声が出ませんから
ジェスチャーで会話をする事になります)から、大体の内容がわかってしまいます。
「お前は、20回の照射なら軽い方だな。」
「お前は、最照射ならだいぶ進んでいるな」
患者さん達は、自分たちの病名も、病気の進行具合も正確に判っていたんですね。
続く。
ここでは私が日々体験したことや感じたことなど、診療に関係する以外のことも書いています。
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