中年期に肥満だった人は、その後の認知症リスクが高まる可能性があることが、100万人を
超える英国女性を対象とした研究から明らかになった。
英オックスフォード大学のSarah Floud氏が実施した研究から、50歳代半ばに肥満だった女性は、
適正体重だった女性と比べて、15年後以降に認知症と診断されるリスクが21%高いことが分かった
という。
Floud氏らは今回、英国で1935年から1950年の間に出生した女性の約4人に1人に当たる113万
6,846人を追跡した。
研究開始時の女性の平均年齢は56歳で、全て認知症のない女性であった。
同氏らは、参加者の肥満度(BMI)を評価したほか、食事のカロリー摂取量と運動習慣に関する
情報を収集した。
ベースライン調査から15年後には89%が認知症なく生存しており、その後、1万8,695人が平均
77歳で認知症を発症した。
分析の結果、15年後以降の追跡期間中に、ベースライン時に肥満だった女性は、その後、
約2.1%が認知症と診断されたのに対し、適正体重の女性では1.6%にとどまっていた。
専門家の一人で米アルツハイマー病協会のKeith Fargo氏は「今回の研究結果は、中年期までの
生活習慣や行動が、老年期の認知症リスクに影響を及ぼすことを示す新たなエビデンスとなる
ものだ」と述べている。
同じく米ノースウェル・ヘルスのGayatri Devi氏は「高コレステロールや炎症レベルの亢進、
脳卒中リスクの上昇など、肥満と関連する因子の多くは脳にも悪影響を与える」と指摘。
「肥満の人は睡眠時無呼吸のため脳に十分な酸素が行き渡っていない可能性もある」と付け
加えている。
Floud氏らはこのほか、BMIの低下や身体活動量の低下、食事のカロリー量の減少と認知症の
関連についても検討した。
その結果、最初の10年間はこれらの間に関連がみられたが、それ以降、関連は弱まり、15年後
にはみられなくなった。
同氏は「これまでの研究から、認知症と診断される10年前から身体活動量の低下と体重減少が
みられることが報告されている」と指摘。
「体重減少や身体活動量の低下、食事のカロリー不足は、認知症の初期の兆候である可能性が
高い」と説明している。
Devi氏は、肥満の人が中年期に減量すれば、認知症リスクを下げられる可能性については
「絶対的に」確信していると述べ、「年齢にかかわらず、健康に気をつけてアルツハイマー病の
予防に努めるべきだ」と助言している。
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